趣味に生きる

紫鯖で活動してい『た』、とあるランサーの日記。

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第二十一夜 ”誓い”

小説っぽい読み物 2008/0704 Fri 23:20:31
どうも、お久しぶりですティルナです!

いや~リアが忙しくてなかなかIN出来なかったりしましたが、小説、なんとか

書き上げたぜ編集長!!

いよいよ次回で最終回な予感です!

その後はいよいよオールスター戦です!

開催は7月22日くらいから参加者募集しようかなぁ、とか画策中です!

恐らく変更されるでしょうけど!!

下手したら10月とか!!

そうならないよう気をつけます!

※とりあえず、今回、小説はとてつもなく長くなってしまったので、読まれる方は飲み物を

片手に読まれることを推奨します m<_ _>m

それでは、本編をお楽しみください m<_ _>m
剣を握る手に力を込める。

互いの距離はおよそ9メートル。

剣の間合いとしても、槍の間合いとしても、やや距離がある。

視界に納めるには十分な距離において、相手を見据える。

変わり果ててしまったルティ。

いつも傍にいてくれたルティ。

そして、自ら死を望んでいるルティ。

去来する思いを自身の剣に託して、足を動かす。

それが、戦闘の合図となった。














ゆらり、とアルタは彼女の右側へと流れるように動く。

ルティもまたアルタの動きにあわせ、彼の右側へと身体を流すように動かす。

円を描くように動く両者は、徐々に間合いを詰めていく。

8メートル/両者は大きく息をする。

7メートル/両者の姿勢がやや低く構えられる。

6メートル/それは、まるで獲物に飛びつく獣の姿勢であるかのように。

5メートル/そして―――

両者は爆ぜるように、その場から駆け出した。

「エントラップメント―<籠の鳥の―>」

静かな呟きと同時に、アルタの周囲四方に分身が生成される。

生成された彼女たちは、中央に立ち尽くすアルタめがけ、槍を突き立てようと疾走する。

「パラレル―<多次元屈折せし―>」

一方、多数の分身に対し、彼はルティの幻影を捉え、自身を中心に、詰め寄る彼女たち

に対し同様の分身を生成し、正面から切り払いにかかる。

衝突しあう両者は、初手から互いの最大の技を以って対峙する・・・!

「―ピアシング!<―断末魔!>」

「―スティング!<―剣の幻兵!>」

轟音を伴い、両者の幻影は剣と槍を交錯させる!

ガキン、キンという鈍い金属音をこだまさせ、幻影は役目を終えたとばかりに消えていく。

その中で―

「・・・へぇ、意外とやるじゃない」

「・・・お前もな、ルティ」

キチキチと互いの武器で鍔迫り合いながら、両者は視線を交わす。

しばらく続くかと思われた競り合いは、槍兵が一際大きく力を込めて突き

放す形で幕を下ろした。

強引に押し切った彼女は、タンと軽快な足捌きで距離を取ると、再び疾りだす。

「今度はちょっと本気で行くわ」

言った彼女の槍は既に、紅い魔力で覆われている。

彼女は走りこむと、そのまま頭上へと大きく

まるで鎌を振り下ろすかのような姿勢で、腕を振り上げる・・・!

「・・・く!」

振り下ろされる爆斧の如き一撃を、アルタは剣で受け止める。



彼女の槍を受け止めた瞬間、彼の足が地から離れる。

「―・・・しま―!」

「遅い!」

アルタは身体を持ち上げられたまま、そのまま壁のほうへと放り投げられるように

吹き飛ばされる!

地を滑るかのように吹き飛ばされたアルタは、ゆうに数十メートルも

あろう距離を滑空した後

ガコン!

背中から壁を抉るように衝突し、その場へと崩れ落ちた。

ぶつかった壁からは、ガラガラと小さな破片が地面へと落ちていく。

「まさか、これで終わりと言うわけじゃないでしょうね?」

数十メートル離れた場所から、彼女は問いかける。

「・・・つぅ、手加減無しか・・・」

と、壁の破片をポンポンと払い落としながら、アルタは立ち上がった。

剣を片手に持ち、アルタは再び視界の奥の槍兵を捉える。

視界に収まる彼女は、微笑を浮かべている。

『さすが、やっぱりこの程度じゃ終わらないわよね』

まるで、そう言っているかのような顔つきで、ゆっくりとした足取りで近づいてくる。

「シマーリング・シールド<凶禍断絶す不落の壁>」

アルタは静かに呟くと、自身が見に付けていた盾を空中へと放る。

と、空中に投げられた盾は地面に落ちることなく、アルタの目の前で止まると

そのまま周囲を旋回し始める。

「・・・やっと使ったわね。今までなぜ使わなかったのか聞きたいくらいだったけど」

空中に浮遊する盾に驚くこともなく、彼女はアルタへと視線を送る。

「・・・なに、身体を乗っ取った奴程度なら、盾無しだといけると思ったんだが、やっぱり無理だったみたいだ」

「そう、なめられたものね。私も」

両者はやや笑いながら、対峙する。

次の瞬間

ダン と両者は床を蹴り、再度剣と槍を交差させる。

片手剣と長槍。

両者は互いの首を撥ねようと繰り出される。

そこに間など、ましてや容赦など無い。

放つ一撃は全て、相手の機能を停止させるためだけに放たれる。

ゆえに、必殺。

「―っ!」

紅い魔力に覆われた槍が、剣士の間合いを侵犯していく。

繰り出される槍は回を増すごとに、剣士の守りを崩していく。

かつて、互いが木の模造品を手に戦っていた時とは違う。

あの時防ぎきれていた槍が、今では捌くことすら困難を極めていく。

・・・まず第一に、魔力の桁が違う。

槍兵の放つ突きは、もはや大砲のそれに近い。

朱色の暴風を纏った槍は、頬を掠めただけで死を想像させる。

「・・・くっ!」

剣士から二度目の苦悶が漏れる。

彼女の槍は、もはや剣士として鍛えられた視力をもってしても、見切れるものでは

無くなりつつあった。

もとよりその軌跡は点だったのだ。

それが、今では閃光と化している。

剣士はここに来て、槍兵と言われるゆえんに、その速さこそが槍兵たらしめていること

を痛感することとなる。

空中に浮遊する盾が、少しも頼りに思えない。

迫り来る槍の刃先が見えない。

ランスを振るう腕の動き、その足捌きさえ、もはや見えざる領域にまで昇華されつつあった。

「ラピッド―<刺し貫く―>」

槍兵の口が、次の瞬間には放たれているであろう技を紡ぐ。

主の声に呼応するように、ランスの穂先が陽炎の如き揺らぎを見せ、アルタ目掛けて

押し寄せる!

「スウィング―<連ね飛び交う―>」

それを瞬時に察知したアルタも同様に、一方多数から成る槍撃に対応するため、腕を

最大限の速度で振りぬく!

「―スティンガー!<―神速の槍!>」

「―インフィニティー!<―無限の軌跡!>」

互いの武器が、甲高い音を上げていく。

彼女から前方に放たれた6発の突きに対し、彼もまた6つの軌跡を以って対処する。

・・・彼が、ここまで防げたのは、彼女の放つ技の全容を、知っているからに他ならない。

通常ならば、この打ち合いの最中で彼は敗北を喫していたことだろう。

だが、彼女と共に過ごした年月が、共に戦っていた記憶が、彼の剣を無意識に

彼女が放つであろう位置に動かしていく。

培ってきた戦闘経験。

彼女が持つであろう『技』という名の情報。

アルタは自らの予測と超人的な視力を以って、戦いに臨んでいる。

それは、決して誰もが持ちえぬような、非凡なるものではなかった。

彼が持つ、唯一にして絶対の技術。

未来を視る、などのような「生まれつき」の能力とは違い、彼のそれはただひたすらに

磨き上げられた、凡人ゆえの武器だった。

「―が・・!」

だが、やはり剣士の劣勢は変わらない。

本人も気づいていないが、先ほどの壁への一撃は、剣士の意識を掠めるには十分だった。

防ぎきったはずの攻撃の余波が、彼の意識を奪っていく。

見れば、彼が身に付けている鎧の所々が傷だらけ。

彼女の槍撃を受け続けた刀身も歪み始めている。

「デザートブラスト!<蹂躙せし横薙ぎの一閃!>」

「・・・!」

彼女が一際大きく身体を捻ったのを見て、アルタは防御に移る。

だが―


















バキン、と

床へと崩れ落ちる最中、視線は彼女の槍に両断された盾を見た。

      ―勝てない

唯一の守りを失った。

しかし、剣が、それを振るうための手も、足もある。

「・・・っつぅ・・・」

背中から床へと落ちた身体を起こす。

剣を杖代わりに、ゆっくりと起き上がる。

立ち上がる最中、彼女は攻撃してこなかった。

『まだ倒れるには早い』

絶対的な強者が見せる歪な微笑の視線が、彼女から自身へと注がれる。

そうして立ち上がった自身に、再び彼女は肉薄する。

「・・・・・・!」

左右上下から繰り出された槍撃は4発。

手に未だ握り続ける剣で攻撃に応じる。

「・・・っつあああ!」

力を振り絞り、吼えながらも防御に徹する。

だが、気付いたときには床へと倒れていた。

そして、床を見て驚いた。

床一面が、真っ赤だった。

それが自身の血によるものだと理解するのに、数秒かかった。

と、立ち上がろうと床に着いた左手が、カクンと折れて床に肘をつく。

それが既に言う事を聞かなくなったことに、その時気付いた。

     ―勝てない

左手が、死んだ。

しかし、剣が、それを握る右手が、まだ生きている。

ゆえに、立ち上がる。

立ち上がった自身に、再び槍の一撃が入る。

幾度となく攻撃を喰らっては、立ち上がり続ける。

・・・その姿を槍兵はどう捉えたのか。

「・・・呆・・・た。こ・・・れ・・・だ・・・立ち・・・な・・・て、決・・・は既につ・・・ると・・・のに」

「・・・・・・」

もはや彼女が何を言っているのかも、よく聞き取れない。

視線を床に移せば、ポタポタと赤い水溜りが、徐々に大きくなっていくのが見えた。

顔を上げれば、それだけでも倒れてしまいそうだ。

「・・・・・・・・・・・もういいわ、この一撃で決めてあげる」

最後の言葉だけが、はっきりと聞こえてきた。

彼女は大きく振りかぶると、紅い風を纏わせた刀身を、自身の首元目掛けて走らせる。

朦朧とする意識で、剣を必死に走らせる。



パキン

まるで水晶が剥離するかのような甲高い音を立てて、剣が折れた。

      ―勝てない

武器を、失った。

剣が折れたのと同様に、心が折れかけた。

残ったのは、右手だけ。

それで一体、どうやってあの約束を守れと言うのか。

傷ついた身体は「止めろ」と警告を繰り返す。

盾も剣も失ったと判断してしまった脳が「止めろ」と警鐘を鳴らし続ける。

それでも―




















それでも、彼が立ち上がったのを、槍兵は見た。

鎧は砕かれ、守りの軸と成る盾も割れ、恐らくは自身で最高だと思っていた剣も折った。

にも関わらず、彼は立ち上がる。

呼吸はあらく、立ち上がる足もおぼつかず、もはやいつ死んでもおかしくない。

いわば死に体。

さながらゾンビを思わせるようなその振る舞いに、知らず、苛立ちが募る。

「・・・!」

立ち上がった彼に対し、槍を振るう。

と、彼の手には先ほど折った剣とは別の剣が握られていた。

・・・恐らくは万が一のため、と思い持ってきた物だろう。

だが、その剣は先ほどの剣と比べれば格段に劣るものだ。

さらに、剣の主も死に体である。

ゆえに―

パキン!

薙ぎ払った槍が、剣を横薙ぎに折る。

綺麗に折られた刀身はヒュンヒュンと風切り音を立てた後、床へと突き刺さる。

剣を折られた衝撃で、彼は床へと倒れている。

一撃を防ぐごとに、剣は主の身代わりとなっていく。

そして

「・・・なぜ、立ち上がる」

疑問が、知らず声になって出てくる。

問いかけた視線の先。

肩で激しく息をしながらも、彼は立ち上がった。

その姿には、もはや答える気力すらも残っていない。

「・・・ッ」

疑問を口にした自身を心中で罵る。

最初から答えなど出るはずも無い。

もはや死に行くだけの身体ならば、問いかけなど無意味だ。

これで終わらせてしまおう、と

彼女は槍を突き出した―


















槍が、死が迫ってくる。

怒りが込められた槍は、かつてない速さで自身に迫る。

「・・・つ・・・・ぁ!」

それを、カバンにしまった最後の一本で防いだ。

防いだ代わりに、剣が真っ二つになる。

これで、打ち止め。

もはやカバンには傷を癒すものも、代用の剣さえも無くなった。

なんて無様。

結局、彼女に一太刀も浴びせずに、このまま朽ちていってしまうのか。

『待ってるからね』

彼女は俺こそが唯一の希望だと、そう言っていた。

俺は、そんな彼女に応えてやることすら出来なかったのか。



槍が迫る。




そんな彼女の一撃が




自分はここで死ぬのだと、数年前のあの戦争の時のように受け入れた。









あぁ、そういえば、そんなこともあった。






むせかえるほどに充満した血の臭い。






知っている者など視界から潰えたあの戦場で。






あの時、俺は何に手を『出してしまったのだろうか』―――
















気が付けば、そこは白銀の砂漠だった。

空は灰色。世界というにはあまりにも非現実的だった。

太陽も雲も、白に近い灰色をしている。

その砂礫の大地に、なぜか自分が立っている。

あぁ、もしかして、ここはあの世と言われる世界なのだろうか。

『いや、ここはお前さんの心象世界だよ。主殿』

不意に、そんな声が聞こえた気がした。

「あるじどの」を高慢な声で言ったほうへと、振り返る。

そこには、砂地に突き立てられた一本の剣があった。

『・・・あれ、いない』

『いや、お前の目の前にいるから。ちゃんと立ってるから』

・・・声は、間違いなくその剣から発せられていた。

『お前は?』

『さっきの会話で悟ったと思ったんだが・・・まぁ、無理も無い。なにせ、お前は俺を使った後、記憶を失くしちまったんだから』

『え・・・?』

『だから、お前は記憶を失くしちまったんだよ。俺を使った結果としてお前はあの死が渦巻いていた死地から生還した。だが、お前は俺を使った代償を見て酷くショックを受けていた。なかなか愉快な見物だったが、そのショックでお前は俺のことはおろか自身の記憶すら忘却してしまったのさ』

訳が分からない説明を、この剣はした。

そもそも、なぜこいつは俺の過去を知っているのか。

それに・・・「俺を使う」・・・?

『お前、一体・・・』

『俺か?そうだなぁ・・・お前らの世界で言うところの「魔剣」と言われる存在だな。まぁ、聖なる力にしろ人間が鍛え上げた剣にしろ、多くのものに不幸をもたらすなら、それは総じて魔剣なんだがな。俺の場合は他を凌駕してるらしいんだが』

表情があるのならば、にたりと笑みを浮かべてそうな言葉で、奴は言った。

『まぁ、そんなことを聞きたいんじゃないんだろ?俺は、今はお前を宿にしている剣だよ。お前は数年前のあの時、あの戦場で、『生き延びたい』という願望を持った。ゆえに、俺はその願いを叶えてやっただけの、ただの魔剣だよ』

『願いを・・・叶えた?』

『あぁ、そうとも。・・・まぁ、ここから外の世界を覗かせてもらってたわけだが、お前、今もある望みがあるだろ』

言われて、静かに頷く。

『俺は、彼女との誓いを果たさないといけない』

『まぁ、血気に逸るのはいいんだが・・・。道具でしかない俺が言うのもなんだが、それって、本当にあの女が望んだことなのか?』

その言葉に

『いや―』

ただ一言返して

『だけど、それは決して叶わない望みなんだ、と。彼女が・・・』

『お前ね、俺の話聞いてた?そう、俺なら―』

望みを叶えられる、と

自分が、願っても願っても届かなかった答えを、奴は口にした。

『ただし―』

『わかってる。代償だろ。俺の故郷を、父を消した時のようにな』

『なんだ、さっきとは一転して物分りがいいじゃないか。それと、願いを叶えると言っても、一度外に視界が戻れば俺はただの、「ちょっと他のやつより出来がいい剣」だ。つまり、願いが叶うか否かはお前次第ということだ』

それでも、お前はこの血塗られた剣を手に取るか。

魔剣は静かに問いかけた。

『・・・』

何も言わず、魔剣の柄を右手で掴んだ。

途端、視界が白く染め上げられる。

『交渉成立だな。まぁ、せいぜい頑張りな』

真っ白になった景色の中、その声だけがはっきりと聞こえた。





























そうして、決着がつくはずだった。

確実に首を刎ねるはずだった一撃はしかし

「・・・ッ!」

立ち尽くす彼が握った剣により弾かれた。

いや、そんなことよりも・・・

「お前・・・その剣は・・・!!!」

ありえない。

そんなことなど、認めない。

それを認めてはならない。

しかし、彼が握っている剣。

見間違うはずも無いその剣は―

























目前で、奴は驚愕の声を発した。

どうやら、手に持った剣に対してらしい。

『その剣は、お前に本当に守りたいものができた時のみ、使いなさい』

あぁ、この土壇場で全てを思い出した。

それは、連綿と受け継がれてきた剣。

そして、かつてルティの師も使い、随一の悪魔を討伐したと言う稀代の魔剣。

今再び、その姿を現世に現した。

そう、この剣があるならば―




まだ、届く。

必ず届く。

この身体がそれを諦めない限り。

機能しない箇所は、まだ機能出来る部分で補え。

両足を地に、両手は剣に。

そう

この希望は決して、幻などでは無いのだから――!!!















「悪い、ルティ」

知らず、呟いた。

もはやルティでは無くなった彼女を、静かに見つめ

「お前との約束、守れそうに無い」

だから、と

「俺がお前の望みを、叶えてやる・・・!」

死にかけの身体を奮い立たせ、彼女を見据えてそう言った。

『生きたい』、と。

誰もが願う、当然の願い。

ゆえに普段は失念しがちな想い。

彼女が誰よりも願った想いを、俺が引き継ぐ。

そうして、改めて目前の彼女を視界に捉える。

「・・・ふん、死にかけの身体でよくもそんなことを」

怒りを露に、彼女は槍に魔力を込めながら構えを取る。

「たとえその剣を持とうが・・・過程が変わろうが・・・結果など、変わらない!」

閃光と化した槍が、自身を貫こうと空間を走る。







―――それは、ありえない動きだった。

今まで受けるのみだった彼の剣が、彼女の槍を捌く。

しかし、それを成す身体は、もはや満身創痍なはずだ。

左手は潰れ、足取りもおぼつかず、頭部からの出血も見られる。

本人は気づいていないが呼吸すらもままなっていない。

踏み込む一歩も剣士のそれとは違い大雑把。

ゆえに、繰り出される一撃は平凡以下だ。

「・・・ぐっ・・・!」

・・・なのに。

―槍で受けたその一撃で、足が床に僅かに沈む。

今までのどんな一撃よりも、その剣の初撃は、重かった。

呆気に取られた心は、瞬時に驚愕に変わる。

一体どこに、そんな力が残っているというのか。

呻りを上げて振り下ろされた一撃は、自身のランスをも震わせる。

もはやかつての余裕など、抱いていてはやられる。

油断ならぬ相手と捉え、自身の力を最大限に駆使し、槍を振りぬく・・・!

「デザートブラスト!<蹂躙せし横薙ぎの一閃!>」

魔力を伴った彼女の槍は、彼の胴体を薙ぐには十分すぎるほどである。

しかし

「・・・・・・・・・・・!」


それを、防がれた。

剣を盾にして、彼は剣を持った右手のみで、彼女の槍を止めていた。

否、止めるに留まらず、彼はそのまま彼女へと刃を走らせる!

「――く!」

とっさに槍による防御を試みるも、危うく態勢を崩されそうになる。

殺さなければ殺されると直感した。

魔力で覆われた轟槍は彼を襲い、

死に体の彼はがむしゃらに剣を繰り出す。

両者の攻撃が両者を挟む空間で、激しく火花を散らす。

もはや死に際の、最後の力と言うには、あまりにもその時間は、長すぎた。

事実、彼女が予想した攻撃回数を遥かに上回る回数で、彼は攻撃を行っている。

それは、ほぼ互角とも取れる戦いだった。













―一撃を繰り出すために、さらに一歩を踏み出す。

意識は朦朧としている。

身体も言うことを聞かず、酸素を求めて悲鳴をあげている。

血を流しすぎたせいか、視界も暗い。

その全てを、思考でねじ伏せる。

ここで立ち止まるわけにはいかない。

ここで倒れてしまうわけにはいかない。

この心は、ただ彼女を救うために在り続けると誓ったのだから・・・!










一際大きな一撃を受け、彼女の様相は狂乱を呈し始める。

理解出来ぬ、と。

死にかけの、それも人間がよもやここまで出来るとは、一体誰が予想だにしたことだろう。

彼があの剣を持っていたことも、彼女から落ち着きを失わせていくには、十分な事実だった。

『運命とはある一つの事象に関連して、他の関連事項をも巻き込みながら発生していく。数奇な運命の演出とは必然であり、時として思わぬ形で表出することもある、ということを覚えておくといいぞ』

彼女の脳裏で、記憶の中の悪魔がそう述べていたことを、知らず再生していた。

「・・・チ」

そんなことなど、あってたまるか。

この時を待ち続けて幾星霜。

たかが二十年程度を過ごした輩に、負けるわけなどいかない!









「ぐ―!」

「づ―!」

一際高い剣戟の後、両者は互いの衝撃により、後方へと退く。

彼女の槍と彼の剣が、互いを討ち取らんと繰り出した攻撃によるものである。

その距離、およそ4メートル。

両者とも一息で飛び込めそうなその距離において、しかし

彼女の狂乱が、頂点に達しようとしていた。

「殺してやる!殺しテやる!殺シてヤる!殺シテやル!殺シテヤル!!」

短く強力な呪いの言葉を、彼女は吐き続ける。

「お前も!外の奴等も皆殺しにして、私はこの世界の覇者になる!!」

狂ったように言うと、彼女はタンと軽やかに自身の後方へと跳んだ。

開いた距離は槍の間合いなどの話ではなく、ゆうに百メートル以上はある。

・・・途端、大気が凍る。

狂乱によるところもあるが、当初の殺気とは比べ物にならないほど冷たい殺気が、彼女

から放たれる。

それは、彼女の次の一撃が、間違いなく巨大なものであることを、彼は直感で悟った。

「死に間際のお前に、この攻撃をかわす術などあるまい!!」

誰もが聞けばゾッとするほどの声を上げ、彼女は姿勢を低く構えた。

その姿勢は、獣が獲物に飛び掛る瞬間のようにも見てとれる。

大気が凍る感覚に、彼は自身の頬がピリピリするのを感じた。

地面に手足をついた彼女の腰が上がる。

もはや、いつ飛び出してもおかしくはない姿勢で

「私の力がどんなものか、既に分かってるわね」

冷たい、冷酷ともとれる声で、彼女はそう言った。

それに答える余裕など、彼には無かった。

・・・それから、一体どれほどの時間が経ったのだろうか。

否、両者を包むこの空間が、先ほどの剣戟を交えていた時間とは

あまりにもかけ離れていた。

実際は、まだ数十秒ほどしか経っていない。

彼の頬を、一筋の汗が伝う。

誰もが息を呑む静けさの中

「・・・行くぞ!」

彼女の紅い瞳が、ギラリと輝る。

もはや人間の力を超えた速度を持った彼女は一陣の突風となって、両者の

間を駆け抜ける。

その間は、百メートル。

だが、彼女は助走を以って槍を突き出したわけでは無い。

何を思ったか。

数十メートルもの距離を一息で駆け抜けた彼女は、あろうことか空高くへと大きく

『跳躍した』。

宙に舞った身体。

大きく振りかぶった彼女の手には、自身の身長以上のランスが握られている。

ピシ、と大気が凍り付いていく。

―かの悪魔の伝記によれば

「ジャベリン―<天地揺るがす―>」

―その力は人類を遥かに凌駕し

―時には自然そのものを、自身の力に変えるほど強大であったという―

主の声に呼応し、槍がもはや目視出来ないほどの、高密度の魔力に覆われていく。

行き場を無くした魔力の一部が雷の如く、周囲の壁、柱、床を破壊していく。

それはまさに、嵐の具現。

槍兵は空中で大きく上体を反らしながらも、眼下の敵をその深紅の瞳で見据える―!
















それは、もはやかわすなどというレベルでは無かった。

この塔すらも削り穿つ攻撃を、彼女は繰り出そうとしている。

ならば、どうすればいいのか。

・・・それは、極々単純なものだった。

かわすことも、防御することも不可能であるならば、彼女の攻撃を上回る攻撃をすればいい。

両手で担ぐように剣の柄を持ち、刃を寝かせたまま背へと回す。

・・・もはや彼女の攻撃に対抗するには、これしかない。

両目を閉じ、自身に流れる魔力を剣へと移して行く。

移された魔力が外気に触れ、剣に巻きつくような蒼い蛇を形成しだす。

しかし、その蛇は見る間に巨大なものとなり、剣を起点に巨大な渦を形成していく・・・!

彼の魔力の影響か。

床が大きく振動し、床の破片が無重力の中にいるように、空中に浮かび上がっていく。

大気の振動が極限まで差し迫ったとき、閉じていた両目が大きく見開かれる。

見開かれた視界の先。

見えぬはずの視線を捉え、アルタはその場で踵を中心に回転を始める。

「ドラゴン―<荒れ狂いし―>」

両者は視線を交わすと、己が真の力を以って対峙する!







     互いの魔力が互いを喰らわんと
               紅き月たゆたう天と地に向かい、咆哮を上げる!











「―テンペスト!!!!<―大嵐(たいらん)の槍!!!!!>」

「―ツイスター!!!!<―龍の逆鱗!!!!>」













空中でそれらが交わった瞬間

世界が、爆光で白く染め上げられた。
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