趣味に生きる

紫鯖で活動してい『た』、とあるランサーの日記。

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第十七夜 ”蒼月の下で”

小説っぽい読み物 2008/0530 Fri 23:49:29
いよいよ残すところ後数回になりました。

こんばんは、ティルナです ヽ( ゚∀゚)ノ


今回はまぁ、重いです。

自分なりに精一杯重くはしたつもりですが・・・

やっぱり技術がなぁ・・・。

表現方法を勉強する良い機会にはなりましたが、はてさて。

もし、みなさんならどうするでしょうか。

そのへんも考えながら読んでみると、面白いかもしれませんね。


それでは、本編をお楽しみくださいm<_ _>m
「ル、ティ・・・?」

窓から見えた人物に、驚きを隠せなかった。

窓の外、やや芝が生えている場所に、彼女がいた。

建物の構造上、彼女はやや俺を見上げる形で立っている。

俺が驚いたままでいると

「ね、ちょっと、散歩しない?」

彼女は笑顔で、そんなことを言ってきた。

「・・・え?」

彼女がいることに驚いて、俺は彼女の言っていることが理解できなかった。

なぜ、彼女がここにいるのか。

なぜ、彼女が散歩を提案するのか。

そして

なぜ、彼女はこんな時に、笑顔を浮かべれるのか。

けれど、その笑顔がどこか儚げに見えて

「・・・わかった」

俺は知らず、散歩の提案を受け入れていた。









街は、閑散としていた。

道を行き交う人々もいなければ、家々の明かりも既に落ちている。

明かりが無いせいだろう。

建物の隙間、開けた空に点在する月といくつもの星が

いつもに比べて明るいような気がした。

星々が照らす石畳の上を、二人で歩く。

ルティがやや先に行った後を、俺が追うような形で、道を進んでいく。

彼女は後ろで手を組みながら、緩やかな足取りで、街中を歩いていく。

俺は特に何を言うでもなく、彼女の後ろから、彼女と同じ足取りで後に続いた。

彼女は立ち止まることも無く、ゆっくりと、街を見て回った。

公園や噴水広場、南側の細道から北側、崩れた王宮前へと、時間をかけて歩く。

その姿は、まるでこの景色を目に焼き付けておこうとするように、俺には見えた。

やがて、街を一周して宿の前まで戻ると、ルティはくる、とこちらに振り向いた。

その表情は、穏やかなものだった。

「・・・散歩、楽しかったね」

あくまでも穏やかなまま、ルティはそう言った。

「・・・そうだな」

彼女の笑顔を崩したくなくて、俺はそう答えた。

そんな俺の答えに静かに頷くと、彼女は少し顔を俯かせて

「・・・あのね、私、明日には私で無くなっちゃうんだ」

予感はしていた、けれど信じたくないことを、口にした。

「・・・」

衝撃で、頭が真っ白になる。

明日の朝には、彼女が消えてしまうという未来が、あまりにも残酷すぎて。

報われぬ代償を、ルティが払わされている事実に、我を忘れそうになる。

と、黙ったままでいる俺の心中を察したのか、ルティはやや表情を曇らせる。

「一つだけ、お願いがあるんだけど・・・」

それでも精一杯、穏やかな笑みを作り、彼女は

「・・・私を、殺して欲しいんだ」

俺を見つめながら、静かにそう言った。

「そんなコト、できるわけないだろ・・・!」

怒声に似ても似つかないような、そんな声を知らずあげていた。

「・・・」

俺の声をどう受け取ったのか。

彼女は俯いたまま、その場に立ち尽くしている。

眼は髪に覆われ、彼女の表情を見て取ることは出来なかった。

「ルティ、お前にはやるべきことがあるんだろ?!なんでそんな・・・」

そんなくだらないことを、と言おうとした時

「それくらい・・・わかってるわよ」

俯いたまま、彼女は静かに、けれど怒気を孕んだ声で、そう言った。

「私だってまだ生きていたいと思ってた!けれど、私が生きていることで、大勢の人が死んでしまうことになる!そんなの、私には耐えられない・・・。耐えられるはずがない・・・。今だって、私が自殺しようとするものなら、すぐに奴が私の身体を乗っ取るつもり・・・。奴はその気になれば、すぐに私の身体を乗っ取れるのに、わざとそうして愉しんでる!そして、最終的には私も消される。私が消えた後で、私の身体がそんな惨劇を引き起こすのであるのなら―――」

私は死んだほうがいい、と

彼女は、泣き崩れそうになる自身をなんとか保ちながら、言い切った。

見れば、握られた彼女の拳が、小さく震えていた。

「・・・」

そこまで言われて、俺は自分の浅はかさにようやく気付いた。

ルティの身体に悪魔の血が流れているとか、そんな話など、どうでもいいのに。

ルティの師が大昔に悪魔を討伐したとか、そんなことをただ延々と考えていた。

なにより俺自身が、ルティの気持ちなど全く考えていなかった。

突然身体を奪われ、翌日には消されてしまうであろう彼女自身の気持ちを・・・。

「ルティ・・・」

「近づかないで!」

歩み寄ろうとした俺に、ルティは拒絶の意志を示した。

今の彼女は、まるで子どもが泣いてしまう、一歩手前のように見えた。

顔は下を向き、肩は小刻みに震えている。

・・・今までこんな彼女を、俺は見たことが無かった。

初めて出会ったあの夜から、今日に至るまで。

彼女は、常に強かった。いや、常に強くあろうとしていたに違いなかった。

どんなに身体に傷を負っても

どんなに心が折れそうな時であっても

どんなに絶望に打ちひしがれようと

どんなに裏切られようと

彼女は決して、涙を見せることは無かった。

誰の支えも借りず、ただ、自身の力で立ち続けた。

胸に誓いがある限り、彼女は決して崩れたりはしなかった。

しかし、目前の彼女は、もはやいつ崩れてもおかしくなかった。

迫り来る未来が、刻限が、運命が。

彼女から全てを奪おうとしている。

そんな彼女に、俺は何をしてやれただろう。

・・・彼女の異変に、真っ先に気付いてやれるはずだった。

いつだって、気付いてやれる時があったはずだった。

なのに、俺はあろうことか、新しい力だとばかり勘違いをして、喜んですらいた。

―今までこんな彼女を、俺は見たことが無かった。

それが指し示す意味でさえ、俺は理解してやれなかった。

自分の愚かさに、後悔の念のみが浮かぶ。

大切な人の危機に気付いてやれない自分など―――。

「ルティ」

一歩。

止めていた歩みを進める。/それでも俺は―

「・・・来ないで・・・」

ルティは下を向いたまま、弱々しく声を出す。

一歩。

後数歩で辿り着く。/たとえ、世界中からお前に彼女と共にいる資格は無いと言われても―

「・・・来ない、でよ・・・」

彼女は、今にも泣き出しそうな、けれど精一杯の声をあげた。

一歩。

彼女の目前まで進む。/彼女が誰よりも愛しくて、大切だから―

俺は、彼女の背に手を回した。

・・・回した腕は、ひどく頼りなかった。

強く抱きしめてやることも、自身のほうへ抱き寄せてやることも出来なかった。

けれど、心は確固たる覚悟を。

決して破らないと誓ったことと共に。

ただ、傍にいてほしかったから、その気持ちだけは、揺るぎの無いものだと信じて。

そして

「もういいんだ、ルティ。俺がお前を、助けてやるから」

静かに、自身の想いを告げた。

回した腕に、少しだけ力を込めた。

この誓いは、他の何物よりも硬いものだと言うように。

「アルタ・・・」

抱き寄せられた彼女は、顔を俺の胸に埋めると、そのまま泣き出した。

嗚咽交じりに、まるで子どものように、泣き出した。

そんな彼女の頭を、優しくさすった。

泣きじゃくる子どもをあやすかのように、ゆっくり、ゆっくりと。















しばらくして、泣き止んだ彼女は

「恥ずかしいところを見られたなぁ・・・」

と、照れながら言っていた。

それから、俺とルティは出会ってから数年間の出来事を、互いに話していた。

それは他愛の無い、よく聞くような話が大半を占めていただろう。

けれどそれは、今の俺たちにとって何物にも代えられない

とても大切なものに違いなかった。

そして

「そろそろ、時間ね」

不意に彼女はそう言って、立ち上がった。

「・・・そうか」

そんなことしか、言葉で表せなかった。

そんな俺に、馬鹿ね、と

まるで自身に言い聞かせるように言って

「また、明日も会えるのに」

全てを受け入れるかのような、優しい笑顔を浮かべて、彼女は言った。

「ルティ・・・!まだそんなことを!」

彼女の笑顔が言わんとしていることが理解できてしまって、俺は黙っていられなかった。

「ごめんね、アルタ。・・・でも、やっぱりこうするしか方法が無いわ」

「そんなことない!何か方法が、きっと何かあるはずなんだよ!」

そんな叫びも虚しく、彼女は穏やかな笑みのまま、静かに首を横に振る。

「ありがとう、アルタ。あなたと会えて、本当によかった。あなたと、それにルイにも出会わなければ、たぶん私はここまで歩いて来れなかった。私の身体から悪魔だけを取り除く方法は、探せばあると思う。けど、それを探すにはあまりにも時間が無いわ。それに、あなたが私を大事に思ってくれたように、私もあなたのことが大事だから、あなたにだけは生き続けて欲しいの」

そう言うと、彼女は街の外へ向けて、歩き出した。

「明日、アリアン東部に塔が建つと思うわ」

そこで待ってるからね、とまるで待ち合わせ場所を指定するかのような口調で

彼女は背中越しに、そう言った。

その背は、まるで「さよなら」と言うように。

ルティの言葉に、俺は何も返すことが出来なかった。

ルティは、俺と戦って死ぬつもりだ。

彼女は、自身よりも世界を選んだ。

自身が殺されることが、自身の救いになるのだ、と。

その相手が俺であるのなら、これほど幸福なことはない、とでも告げるように。

「・・・ごめんね。」

振り返ることなく、彼女は突然そう言った。

「―――・・・。」

何か言おうと必死に言葉を探したが、言葉が出てこない。

彼女の重い覚悟が、その一端に俺がいるという事実が、なお重く圧し掛かる。

「さよなら」

短く言うと、彼女は宵闇の中へと、消えていった。

「・・・ルティ!」

消えていく彼女へと声をかけたが、彼女が振り向くことはなかった。

冷たい夜風が吹いたかと思うと、ルティの姿は既に消えていた。

・・・そうして、俺は独りになった。

膝から地面へと、崩れ落ちる。

―さっき誓ったばかりではなかったか。

また、大切なものを失ってしまうのか、と。

―彼女を救ってみせると。

以前にも、このような感覚を経験したことがあったような気がした。

しかし、そんなことは彼女が行ってしまった事実に比べると、あまりにも儚いものだった。

空には、蒼い満月が世界を照らし出していた。

その光の中で、俺は―――



















宿に戻ると

「どこに行ってたんだ。アルタ」

階段に腰を掛け、眠たげな瞳をこすりながら、ルイが言った。

「ちょっと、散歩をね」

「嘘だな」

ルイは即座に、こちらの嘘を見破った。

「夜に散歩なんて、お前は今までしたことがなかったろ」

「・・・やっぱり、誤魔化せなかったか」

「何かあったのか、いや、何かあったから、か。・・・お前の顔、酷いぞ」

階段から腰を上げ、ルイが降りてくる。

「・・・何があったんだ、アルタ」

静かに、まっすぐ俺の瞳を見据えて、ルイが言った。

ルイから視線を逸らすことは、出来なかった。

「・・・ルティに会ったんだ、ついさっき」

その言葉に、眠たげだったルイの眼が開かれる。

「ちょっと待て。ルティの身体は乗っ取られたはずだろ」

「ルティは、ルティとしての最後の時間を使って、俺に会いに来てくれたんだ」

その返事に

「・・・最後の時間って、なんだよ」

何か不吉なものを見るような表情で、ルイは言った。

ここまでの経緯を話す。

ルティが明日、消えてしまうということ。

今の彼女は、もはやかつての彼女では無くなりつつあること。

そして―――

「ルティが・・・、あいつが本当に、自分を殺して欲しいだと?」

「あぁ・・・」

静かに頷くと、ルイは

「お前、まさか・・・」

「・・・」

俺が答えずにいると、ルイは突然襟元を掴み、そのまま俺の背中を壁に打ち付けた。

壁に掛けてあった安物の絵画が、大きな音を立てて床へ落ちた。

「ルティを・・・殺すのか?」

襟元を掴むルイの手が、微かに震えている。

沈黙が続く。

ルイは、俺の返事を待っている。

避けては通れない、究極の分岐点。

殺すのか、殺さないのか。

俺は・・・

「・・・彼女がそれを望むと言うのなら―」

彼女が、そう願ったから

「ルティは・・・・・・俺が、殺す」

襟元を掴むルイの瞳を真っ直ぐに見つめ返しながら、そう告げた。

と、ルイはおもむろに掴んでいた両手を放した。

そして

「俺はさ、頭も悪いし、回転だってお前ほど速いわけじゃないけどさ」

ルイは、自らの罪を告白するように言うと

「けどさ!本当にそれで良かったのかよ、アルタ!?お前はそれで良かったのかよ!たかが数年だけどよ、俺等、ずっと一緒だったじゃねえか!ルティを殺しちまうんだぞ!いや、殺せるかもどうかもわかんねぇ!返り討ちにあっちまう可能性のほうが高いんだぞ!それでもお前は―」

ルティを殺すのか、と。

肩で息をしながら、ルイは叫んだ。

二人しかいない廊下に、声は空しく響き渡る。

「・・・さっき言った通りだ、ルイ」

顔を背けながら、俺は答えた。

ルイの顔を、直視することが出来なかった。

俺の答えを聞いたルイは

「・・・ありえねぇよ、お前も、ルティも」

吐き捨てるように言うと、ルイは玄関へ向けて歩き始めた。

「・・・ルイ?」

「・・・お前とはここまでだな。あばよ、アルタ」

乱暴に入り口を開けると、ルイは外へ出て行ってしまった。

見つめる視線の先で

バタン、と扉が閉まった。

ルイが、出て行ってしまった。

思考が麻痺してしまっているのだろう。

ルイが出て行ったしまったことの意味や、ルティに対する自分の意志を

考えることすら出来ない。

恐らく、そうでもしなければ、押し潰されてしまうからだろう。

不意に、足から力が抜けた。

よろめきつつも壁に背を預けたまま、床へと座り込む。

程なくすると、何やら頬を生温い水が流れているので、手で拭った。

それは、俺自身から流れた、涙だった。

握った拳を、床に思いっきり叩きつける。

「・・・俺だって、したくてそんな選択をしたんじゃない・・・」

握った拳が微かに痛んだ。

けれど心のほうが、握った拳よりも、遥かに痛かった。

あぁ、痛い。

痛くて、苦しくて、悲しくて。

そんな選択しか出来ない自分がとても憎くて、憎くて。

「俺は・・・。俺は・・・・・・!」

苦悶の声は、知らず、自身を呪う声へと変わっていた。

窓の外、遥かな空では

蒼い月が雲に隠れながらも、いつもと変わらぬ夜を、照らしていた。

夜風が、窓をカタカタと鳴らしていた。





















最後の夜が、終わった。
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