趣味に生きる

紫鯖で活動してい『た』、とあるランサーの日記。

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第七夜 ”Awakening”

小説っぽい読み物 2008/0331 Mon 11:59:01
第七夜!

こんばんは、作者です。

最近、知人と話していると

「どうせなら小説にOPとED曲つけてみたら?www」と言われまして。

「ふむ、それならこれでどうでしょう」 と曲を探してみました。

その知人さんには大うけしたんですが、他の方はどうなんでしょうね。

というわけで

OP曲

ED曲

作中の雰囲気にあってることを祈るのみです。

もし「この曲をぜひ!」という方がいましたらコメントよろしくお願いします。

それでは、本編をお楽しみください m<_ _>m
仄暗い洞窟の奥。

鍾乳洞で見るような細く尖った岩が、天井から地面に向かって生えている。

岩の先端からは狂うことなく、一定の間隔で水滴が落ちている。

ピチャン ピチャン

水溜りに落ちた水が、小さな波紋を広げる。

薄暗い洞窟の奥

ガキン キン

水滴が落ちる音とは違う、鋼と鋼がぶつかり合う音。

ピチャン ピチャン

波打つ水面が、鋼を打ち合う両者の姿を映し出す。

両者のうちの一方は、どうやら女性のようだ。

手には、両端に刃を持つランスが握られている。

苦戦していることに対して苛立っているのか。

苦々しく舌打ちをしている。

一方、対峙する相手は人間とは程遠い姿をしていた。

鋼の鎧に体を通したその体は、対峙する女性の身長を遥かに越えている。

紫色の皮膚に包まれた顔、その頭部から背中にかけて、鱗が生えている。

腰の部分から伸びる尻尾にも、鎧による武装が施されていた。

中でも一際目立つのは、手に持った巨大な武器。

それは、およそ人間が扱える重量のものではなかった。

ハンマー”鈍器”

それは、斬ることにも、突くことにも向かない。

ただそれは、目前の敵を叩き潰すことのみに特化された形を呈していた。

ブォン!

ハンマーが頭上から振るわれる。

「・・・く!」

女性は軽快な脚捌きで、迫り来る攻撃を回避しようと動き出す。

通常ならば、女性は自身の槍を以って、それを防ぐだろう。

しかし、目前の敵が手にした武器に、それは通じない。

象の踏み出される足に、マッチ棒が耐えられないのと同じように

この敵から繰り出される攻撃は、回避するしか方法が無い。

素早さを利用した女性は、ハンマーの攻撃を間一髪でかわす。

瞬間、女性が数秒前までいた場所に、大きな音と共に、巨大な穴が穿たれる。

まともに受ければ、おそらくは即死。

誰もが恐怖するであろう攻撃、しかし、女性は臆する様子も無い。

むしろ、絶好の好機と見たのか

「ラピッド―”刺し貫く―”」

技名が、女性の口から紡がれる。

同時に、まるで陽炎のように、突き出されたランスの切っ先が揺らぐ。

「―スティンガー!”―神速の槍!”」

瞬時に突き出されたランスの斬撃は、全部で6発。

怪物の隙だらけの脇腹に、鎧の上から浴びせかける・・・!

閃光を思わせる、わずか一息の攻撃。

鋼の鎧に身を包んでいたとしても、その衝撃までは防御しきれない。

まともに攻撃を浴びた怪物は一瞬、身体が吹き飛びかける。

しかし、倒れることは無い。

衝撃で地面を多少えぐりながら後退し、本体を翻す。

攻撃を浴びたことに怒りを感じたのか

―――――!!!

およそ人間には聞き取れないほどの叫びが、洞窟中に響き渡る。

「大した硬さね・・・」

呆れ気味に、女性は言った。

怪物の背後に、わずかに視線をやる。

そこには、うつぶせに倒れている、1人の男性がいた。

「まったく、世話の焼ける・・・!」

言い切ったと同時に、女性は駆け出した。

そもそも、なぜ彼女たちがここで対峙しているのか

話は、数時間前に遡る。



-------------------------------------------------------------------

アルタたちがスマグへ行ってから、翌日。

木漏れ日がまぶしい昼下がり。

「そうか、結局手がかり無しか」

ふむ、と言った具合に、ローザは書類に目を通しながら結論をだした。

口にくわえたタバコからは、細い煙が上っている。

「姐御・・・もしかしてこの展開、読めてたのか?」

まるで苦いものでも飲んでいるかのような表情で、ルイが言った。

「まぁ、あくまでも推測だったからな。外れても致し方あるまい」

下がった眼鏡を、手で上げる。

「これで振出ね・・・」

ルティがやや落胆気味に言った。

「まぁ、気長に調べればいいんじゃないのか?」

慰めるように、アルタが言った。

「そうね・・・」

それでも、落胆の色は隠せない。

「そこまで落ち込むな、ルティ。」

不意に、ローザが口を開いた。

レンズ越しの双眸が、ルティを捉える。

「事実として、お前の探している奴は使い魔を失くしたんだ」

「なら、奴が直接動き出すのも、時間の問題だろう。」

「”アレ”に代わるやつも、そうそういないはずだからな。」

タバコをくわえながら、ローザは言った。

”アレ”とは、かつてルティが倒した悪魔のことである。

グレートフォレストにおける人々の失踪事件の犯人として。

そして、ルティの復讐の対象の片割れとして、彼女に倒されたのであった。

「奴が直接動き出すまで、こっちは様子を見るしか無い、ということね。」

多少不満げに、ルティは言った。

「そうだ。さて、そちらの話は一旦区切って、アルタ」

突然名前を呼ばれ、アルタと呼ばれた青年は少々驚きの表情を見せた。

「え?俺ですか?」

「そうだ。まぁ、お前以外にアルタがいれば話は別だろうが」

少なくとも今はお前さんだ、と書類をめくりながらローザは言った。

「で、何ですか?」

「うむ。仕事だ。」

仕事、という単語に反応したのか、即座に場は緊張に包まれる。

彼らの仕事は「一般の手に負えない魔物の駆除」や「ダンジョンの探索」を示唆している。

それは、常に自分の命を危険に晒していることと、同義であった。

3名の緊張が伝わったのか、ローザの表情も若干、真剣なものとなった。

ローザは書類をめくりながら、依頼内容を読み上げる。

「最近、キャンサー気孔の地下深くで、今まで見られなかったモンスターが現れたそうだ」

「証言をした冒険者によると、マーマン系統が怪しいと思われるが詳細は不明」

「なにせ突然襲われ、仲間たちの大半が犠牲になったそうだ」

パラパラと書類をめくりながら、ローザは言った。

「つまり、そいつを俺たちで駆除しろ、ということですか?」

話を聞いていたアルタが言った。

「そうなるな。」

「で、だ。」

一回話を区切り、ローザはタバコを口から放し、息を吹く。

白いもやが、空中に広がっていく。

「今回、お前らにはそいつが何者であるかの確認と、撃破した証を持ち帰ってもらいたい」

これが依頼内容だ、とローザは言った。

「撃破した証って何でしょうか?」

曖昧な表現に得心がいかないのか、アルタが尋ねた。

「まぁ、身体の一部か、あるいはそいつが持ってる武器か」

「”そいつ”と分かる物であれば何でも良いとのことだ。」

「はぁ・・・分かりました。」

アルタは渋々了解した。

「一応、お前ら以外のパーティーにも、同じ内容の依頼を既に頼んでいる」

「わかっていますよ、俺たちは’保険’ですよね?」

アルタの答えに納得したのか

ローザは微かに微笑んだ後、そうだな、とアルタの答えを肯定した。

こうした危険な依頼でも、依頼である以上、それは果たされなければならない。

ゆえに、依頼主たちは保険として、複数の冒険者のグループ

あるいは冒険者個人に、同様の依頼を持ちかけるのである。

例え依頼に関連した物が、世界に1つしかないものであっても

それを持ち帰った者のみに報酬を与えれば、残りは失敗扱い出来るからである。

また、行き先が危険なダンジョンであっても、それは同様である。

2つのパーティーに依頼をし、片方のパーティーがたとえ全滅したとしても

片方のパーティーが依頼をこなせば、それで良いのである。

依頼主からすれば大事なのは「結果」なのであって、その過程で何人死のうが

それは依頼を受けた者の責任である、という見解が、この世界の一般常識であった。

ただし、もし2つのパーティーに依頼をし、その2つのパーティーが依頼をこなしたとする。

この場合、先に帰ったほうに報酬を与える、または両パーティーに報酬を与えるかは

依頼主の判断に委ねられる。

「ちなみに、今回の依頼を持ちかけたパーティーの数は?」

アルタがローザに問う。

依頼をしたパーティーの数によって、その依頼の難易度を量ることができる。

失敗する可能性が高ければ、自然と依頼するパーティーの数も増えるであろう。

「そうだな、今回の依頼にはお前らを含めて5PT、およそ20名ほどに頼んである」

「20名ですか・・・なかなか多いですね」

少々表情を曇らせながら、アルタは言った。

「そうだな、なにせ未知の敵なんだ。自然と多くなるさ」

そんなアルタにお構いなしで、ローザは言った。

「どうする?ルティ」

と、岩に座って手持ち無沙汰にランスの手入れをしているルティに声をかける。

「生活がかかってることだし、やるしかないようね」

やや軽い溜め息をついて、ルティが言った。

「おーい、俺は無視ですか」

と、今まで沈黙を守ってきたルイが声をあげた。

「あぁ、お前はどうなんだ?ルイ」

まるで忘れていたことを思い出したかのように、アルタはルイのほうを見た。

「俺もルティに賛成。最近財布の中身が吹雪でね」

「そうか、よし、準備が整い次第、すぐ行こう」

3名がそれぞれその場を離れようとしたとき

「ちょっと待て」

3名の口からではなく、ローザの口から、それは放たれた。

「なんでしょう?」

これ以上話すことがあっただろうか、とアルタはローザのほうを振り向いた。

「今回の件なんだが、ルイ、お前には別件の調査をしてもらう」

「「「は?」」」

三者三様の疑問符を上げて、3名が立ち止まった。

ローザは別の書類をめくりながら

「ルイ、お前にはオアシス都市アリアンのとある資産家の不倫関係について調べてもらう」

これがその資料だ、とローザはルイに何やら紙の束を渡した。

「ちょっと待ってくれ、姐御」

たまらず、ルイが反論する。

「他の奴らがダンジョンでモンスターと戦う。」

「というのに何で俺だけ、不倫関係を調べなきゃいけないんだ」

ルイの言葉は至極もっともである。

だが、それを聞いたローザは

「なんだそんなことか」 と言った後

「最近訪れるやつにシーフがいなくてね。」

「探偵業を行える奴が、単にお前しかいなかったのさ。」

単純かつ明快な理由を告げる。

「それに報酬だって悪く無いぞ、そこに金額が書いてあるだろう?」

言って、書類を見てみろ、とローザの視線が語る。

それにつられてルイが書類を見ると

「この仕事、喜んでお引き受けいたします」

と、佇まいを直して、ルイが深々とローザに頭を垂れていた。

「ルイ・・・あなたという人は・・・」

片手で顔を覆い、ルティが嘆息交じりの声を漏らす。

「そういうわけで、後のことは頼んだ!」

ビシっと手刀を作った腕を垂直に立てて、ルイは言った。

「行こう、ルティ。今夜のあいつは晩飯抜きだ・・・」

諦め口調で、アルタが言った。

「え、おい!晩飯抜きとか聞いてねえぞ!おい、戻ってこい!アルター!」

かむばーっく、とルイが叫ぶ。

それを無視して

アルタとルティはキャンサー気孔へと向かうのであった。



そして数時間後

2人は洞窟の内部へと進んでいた。

途中で蟹らしきモンスターと出会うもこれを撃破。

2人は着々と進んでいくのであった。

やがて、2人が問題のフロアへ降り立った時

そこは、先ほどまでいたフロアとは別のものとなっていた。

薄暗い洞窟の中、床は一面の赤。

血が真っ赤な絨毯となって、辺り一面に広がっていた。

絨毯の製造元になっているであろう身体は、そこら中に散乱していた。

その身体を見てみると、どの死体も身体の一部が潰されていた。

まるでトマトを潰したかのように、人間の身体が潰されている。

中には頭部が潰され、どこにいったか分からない身体のみのものもあった。

よく見れば、血溜まりの中には脳の一部分らしきものも、見受けられる。

「これは・・・」

思わず、アルタが口元を押さえる。

「・・・・・・・」

ルティは黙ったまま、周囲の様子を窺っている。

この様子では、生き残っている者はいないだろう。

死んでから、それなりに時間が経っているようだ。

死体の周りを飛び交う蝿が、まるで「次はお前だ」と言っているようにさえ見える。

「・・・先へ進もう」

アルタが、ルティへ話しかける。

「大丈夫?」

アルタの動揺を察したのか、ルティが気を遣う。

「大丈夫だ、それより早く終わらせて、ここから出よう」

吐き気を必死にこらえ、アルタは言った。

「そうね、早く終わらせましょう」

アルタの決意を悟ったのか、ルティはそれ以上何も言わなかった。

2人は、血の絨毯の上を歩き出した。

ピチャ ピチャ

赤い水溜りの中を、歩く。

ピチャ ピチャ

倒れ伏す死体の脇を通る。

やがて、死体が作った絨毯の端に差し掛かった時

―――――!!!!

およそ言葉に出来ない雄たけびをあげて

頭上から2人めがけて’何か’が落ちてきた。

「!」

「アルタ!危な――」

ルティがアルタに何かを言い切る前に

ブォン!

突如として頭上から現れた’何か’が凶器を振るう!

「ぐ!」

アルタはとっさに手に持っていた剣でそれを防ぐ。

しかし、突然の防御では、相手の力を抑えきれるはずも無い。

ガキン!

鈍い金属音を響かせる、それはしかし、アルタを吹き飛ばす。

ドズウゥン

背から壁に激突したアルタの身体は、さながら糸の切れた人形のように

地に倒れ伏すのであった。
-------------------------------------------------------------------

そして、今

ブォン!

技術も何も無い、ただ力任せに振られるハンマー。

それを、間一髪でかわし続ける、1人の女性。

本来ならば、攻撃をかわした後に女性が攻撃すれば、決着はつくはずである。

しかし、目前の敵は、鋼の鎧に身を包んでいる。

さらに暴風の如き激しい一撃があるため、迂闊に攻撃に転じられない。

一撃が、致命傷。

そのリスクを考えるだけで、攻撃のほとんどが封じられたも同然になる。

それでも女性は、攻撃の機会を得るべく、空間を疾駆する。

目にも止まらぬ速さで、相手の周囲を駆け巡る。

時には壁を、天井を、地面を蹴り、相手の逃げ場を封じる。

―――!!!

攻撃が当たらないことに対する苛立ちなのだろうか。

目前の敵が雄たけびをあげて、それでも凶器を振るい続ける。

しかし、その全てが虚しく空を切り、地面を穿つ。

気づけば地面の所々に、巨大な穴が出来ている。

やがて

一際大きく振りかぶられた一撃が外れたと同時に

「(捉えた・・・!)」

この機をなくして勝利などありえない、と言うように

ルティが勝負を決めるべく、モンスターに突貫する・・・!

勝負は、一撃。

これを外してしまえば、背後にあるのは絶対の「死」。

ルティは全ての力を込めて、己が最強の一撃を繰り出す・・・!

「エントラップメント―”籠の鳥の―”」

それは、一体どのような魔術だろうか。

技名が紡がれるその過程において

一瞬でモンスターの正面、背後、側面、はては頭上から

ルティと全く同じ姿の、8体の彼女の幻影が、相手に槍を突き立てにかかる。

囲まれた中心に立たされた相手は、さながら籠の中にいる小鳥と同様だろう。

身動きが取れず、ただ槍で貫かれる運命は、相手に逃れようの無い「死」を告げる!

「―ピアシング!”―断末魔!”」

言い切ったと同時に突き出された槍を全身に浴びて

ドズゥン

モンスターはその場に崩れ落ちた。

ずざざ、と突撃の際の加速により、足が地面を滑る。

「・・・ふぅ」

肩で大きく息をして、倒した相手を見る。

モンスターは倒れたまま、ピクリとも動いていない。

槍で突かれた部分の装甲は砕け、もはや鎧としての機能を奪われている。

ルティは槍を一回振った後、アルタの元へと駆ける。

モンスターを挟んだ向こう側に、アルタが倒れている。

無事を確認しようとルティが走り始めた時

――――!!!!!!

爆音が、洞窟を駆け巡った。

否、爆音に思われたそれは、ルティの目前で倒れ伏す者が放った叫びだった。

モンスターはまだ、生きていた。

「・・・ぅ」

今の叫びで気付いたのか、アルタが頭を抱えながら立ち上がる。

と、立ち上がったモンスターがアルタのほうへと走り出した。

その目は血走り、身を包んでいる鎧も穴だらけ。

まるでそれは、ゾンビのような、けれど明確な殺気を有していた。

「・・・いけない!」

攻撃対象を切り替えたことに気付き、ルティが駆け出す。

だが、遅い。

物理的な距離にせよ、アルタとルティの間にモンスターがいたのだ。

そのモンスターが狂わんばかりに駆け出せば、いかにルティといえど追いつけない。

目覚めたばかりのアルタが、あのモンスターの攻撃を防ぐことなど、論外だ。

殺される。

即座に出た結論に、何よりもルティは理解した。

殺される。アルタはよけきれない。あの凶器に潰されて殺される。地面には赤い絨毯。まるでトマトを潰したよう。アルタも同じようになる。蝿にたかられる。それだけは嫌だ。ならどうやってあの攻撃を防ぐ。無理だ。間に合わない。弓ではあの突撃を止められない。なら――

どうすれば、と

彼女は思考の限りを尽くしつつ、駆ける。

一方

目を覚まして立ち上がったアルタが見たものは、純粋な殺意。

モンスターの目は血走っており、もはや正常なものとはいえなかった。

目前のものを「敵」と認識した時、それは既に手遅れ。

目前のそれは、手に持ったハンマーを高々と振り上げていた。

あとは振り下ろすのみ。

「・・・ここまでか」

苦々しくアルタは言って、目を閉じる。

それは、死を覚悟した表情。

暗闇の世界で、アルタは自身の終わりを待つ。

瞬間

ザシュ

切断音が、聞こえた。

「え?」

このモンスターの武器からは、少なくとも斬撃の類の音は出ないはずである。

そして何よりも

目を閉じてから数秒経っているにも関わらず、「まるで何も無い」

おそるおそる、アルタが目を開ける。

目前のモンスターは急停止したかの如く、ハンマーを振り上げたまま止まっていた。



ズルリ

まるでバランスの悪い立体パズルのピースのように

モンスターの脇腹を斜め上に駆け上がった切断面が、身体を二分した。

巨大な壁が取り除かれた向こう側。

アルタのよく見知った人物が、顔を伏せたまま立ち尽くしている。

見れば、槍が振りぬかれた後のような佇まい。

しかし、槍を振っても、とても届きそうな距離ではない。

そう、アルタが彼女の槍を注視するまでは。

アルタは見た。

彼女の槍を、薄紅色の魔力が覆っていることに。

それは、この世の自然のどの属性にも当てはまらない、純粋な魔力。

魔力を行使する際には、必ずいずれかの属性に当てはめられる。

すなわち、火、水、風、大地、光、闇の6属性。

だが、彼女の槍を覆う魔力は、そのいずれにも該当しないのである。

「ルティ・・・それは・・・」

恐る恐る、アルタが彼女に尋ねた。



彼女と一瞬、アルタは目が合った。

そしてその瞳が、漆黒を称えていたものから

鮮血を思わせる紅い瞳になっていることに、アルタは気付いた。

一瞬の視線の逢瀬の後。

彼女はその場に倒れた。

槍の魔力も消え、乾いた音を立てて、ランスが転がる。

アルタが駆け寄る。

何度呼びかけても、彼女は反応しなかった。

呼吸の音や心音に、異常は無い。

どうやら気を失っているようだ。

「よかった・・・」

ほ、とアルタは肩を撫で下ろした。

しばらくルティを寝かせ、諸々の作業を終える。

作業を終えても、ルティは目を覚まさなかった。

いまだに寝続けるルティを抱きかかえ、洞窟を後にしようとする。

抱きかかえた彼女の身体は、身長に見合わないほど軽かった。

床には一面の血。

その中にあって、アルタは彼女が美しく見えたかのような錯覚に陥った。
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