趣味に生きる

紫鯖で活動してい『た』、とあるランサーの日記。

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第四夜 Cold Weather

小説っぽい読み物 2008/0323 Sun 02:14:44
早くも第四夜です。

今回で、主要キャラクターが揃うの・・・・か?

揃うことを願いたい!

それでは、本編をお楽しみください m<_ _>m
そこは、宿とも家とも呼べない、何とも言えない佇まいを呈していた。

時刻は午後10時ごろ。

陽の代わりに世界を照らす月の光が、その建物の全貌を露にしている。

木造2階建て、横幅と奥行きを、その建物は併せ持っていた。

一般家庭よりもやや上級の家。

そう考えるほうが妥当なのかもしれない。

「短期から長期まで お気軽にお訪ねください!」

錆び付き、風に揺られている看板が、いかにこの宿(?)に人が来ないかを伺わせていた。

全く飾り気も無い宿だが、マスターからの好意を無碍にするわけにもいかない。

それに時刻は10時を越えようとしている。

さすがに今から宿を探すのも困難な話だろう。

それに寝泊りするだけの場所なのだ。

安く済むのなら、それに越したことは無い。

片開きの扉に、手をかける。

入ったことに気づいたのだろう。

誰かが中から出てくる。

「いらっしゃい。マスターから、話しは聞いてるよ」

聞く者を不快にさせない、温和な声。

自分よりもやや背が高い、水色に近い、青い髪が印象的な青年が奥から出てきた。

「夜分遅く、突然の申し出を受けていただき、ありがとうございます」

こんな時間の来訪、それも宿泊の予約など、本来ならまかり通るはずが無い。

私は感謝と謝罪の意を、相手に伝えた。

「気にしなくていいよ、お客さんなんて滅多に来ないから。」

たはは、と苦笑しながら青年は答えた。

「あぁ、自己紹介がまだだったね。」

言って青年は、自分の名前を口にする。

なかなか覚えづらい名前だった。

「覚えづらかったら、アルタと呼んでくれたらいい」

こっちの心情が読めるのか、それとも過去の経験からか、青年はそう言った。

青年の自己紹介の後、私も自身の名を口にした。

こうして自己紹介をするのは、実に何年ぶりだろうか。

自分の名前を聞いて、男性は少々困った顔をしていた。

もはや昔のことだが、私の名前は村のみんなに比べ、少々長かった。

子どものころ、呼び方を間違えた友人に、何度訂正を求めたことか。

「名前は先ほどの通りですが、長いのでルティと呼んでください」

困った顔をしていた男性は、それで問題が解決したのか

「じゃぁ、これからよろしく、ルティさん」

朗らかな笑顔で、片手を差し伸べてきた。

「『さん』付けされるのは苦手なので、呼び捨てで結構ですよ」

苦笑しつつ、差し出された手を握り返す。

それが契約成立の証明だったのだろう。

私は部屋へと案内された。

部屋へと向かう途中。

この宿での決まりごとが、彼の口から伝えられた。

食事は朝・昼・晩、居間で共にとること。

浴場はいつでも使えるので、気が向いたら使用してもいい、ということ。

私とは別に、もう1人宿の利用客がいる、ということ。

その人は男性で、名前が長いので「ルイ」と呼んでいること。

今は仕事のため外出してるが、悪い人物ではないということ。

自分も実はこの宿の利用客なのだが、宿暮らしが長いので管理人もしているということ。

短いながらも、説明がなされた。

「はい、これが鍵。失くしたりしないよう、注意してね」

言われて、鍵を渡される。

「ありがとうございます。では、しばらくお世話になります」

言って頭を下げる。

「こちらこそ、よろしく。じゃ、おやすみ」

自分が来た時と同様の、温和な声。

あてがわれた部屋へと入る。

外観からは察しがつかなかったが、内部はなかなか広かった。

フローリングの床、部屋の中央に吊るされた照明は、見ているだけでも温かい。

吊るされた照明の下には、丸い木造のテーブルと2脚のイス。

テーブル奥に見える縦長な窓には、簡単な置物が置けるスペースもある。

部屋の左隅には、質素だが、落ち着いた雰囲気のベッドがあった。

反対側には、埋め込み式のクローゼットもあり、衣服をしまっておくには便利そうだった。

部屋へと入り、ベッド脇まで移動する。

ベッドの横に荷物を置き、そのままベッドに倒れこむ。

お客さんが来なくとも、ちゃんと干されていたのだろう。

ぼふん、という音を立てて、心地よい感触が体を包む。

「(ここからが、本番か・・・)」

心の中で、一人ごちる。

何を考えるでも無く、うつ伏せのままベッドに身を沈める。

お酒が今になって効き始めてきたのか。

ベッドに倒れこんだまま

私は深い眠りへと落ちていった。



天井から吊るされたランプが、あたりを照らす。

ランプの中のろうそくの火は、時折かげろうのように揺らいでいた。

「結論から言うわ」

両手をテーブルの上で組みながら、ルティは言った。

話しを切り出したルティに、視線が集まる。

居間のテーブルには、湯気が上っている3つのカップがあった。

「私はたしかに、私の村を襲った奴を殺したわ」

ルティの報告に、場の空気が重みを増す。

2人の男性は、黙ったまま、彼女の次の言葉を待った。

「だけど、奴には黒幕がいたの」

苦々しく、彼女は言った。

「黒幕?」

向かいの席に座るアルタが、疑問の声をあげた。

それに彼女は、無言で頷いた。

「つまり、そいつに指示を出してたやつがいたってわけだ」

頬杖をつきながら、アルタの隣に座っていたルイが、彼女の答えを代弁する。

「そう、だから、明日ローザのところに報告しに行くついでに、詳しく話を聞こうと思ってるの」

どうだろう? という彼女の視線に

「ローザさんか・・・まぁ、たしかに何か知ってそうだな」

アルタが、彼女の案に同意する。

「ローザの姐御なら、俺もちょっと用がある。一緒に行ってやるよ」

ルイもまた、彼女の案に賛成の意を表す。

「ありがとう。一緒だと、心強いわ」

わずかに微笑んで、彼女はカップの飲み口を、口に運んだ。

その後、明日の予定などについて話し合い、その日は解散となった。

話しが終わると、早々にルイは自室へと戻っていった。

居間に残っていたルティも、自室に戻ろうと席を立つ。

ルティが居間から去ろうとした時

「ルティ、ちょっと・・・」

アルタに呼び止められ、彼女は振り返る。

席に座ったまま、アルタは

「こんなことを言うのもなんだけど」

そう前置きして

「実行犯は倒した、だから、その・・・」

一旦視線を彼女から逸らし、意を決して再び見る。

「お前の復讐は終わった。この後、お前はどうするんだ?」

この宿から出て行ってしまうのか。

おそらく、そう彼女は聞こえたのだろう。

しばしの沈黙。

居間には、時計の音だけが響き渡っていた。

不意に、彼女は静かな笑顔で

「すぐにここは出て行かないわ」

そう答えた。

「なんだかんだ言っても、まだ私の復讐は終わってないし」

それに、と彼女は付け足した。

「私、復讐の後のことなんて、まだ考える気にもならないもの。」

彼女の答えに不安か、安心を感じたのか

「そうか・・・そうだな、悪い、引き止めて」

アルタも静かな笑みを浮かべて、そう返した。

「ん、おやすみ、アルタ」

「おやすみ、ルティ」

ルティが居間から去っていく。

後には

薄明かりの中、両肘をテーブルに乗せ、組んだ手に額を乗せる

アルタの姿だけが残っていた。



翌日

陽が高々と上ったころ。

「それにしても、毎度のことながらこの道のりはな~」

溜め息混じりに、ルイが不満を口にしていた。

古都ブルンネンシュティグからハノブ方面へ歩を進めること、1時間。

3人はそれぞれの装備に身を包み、街道を歩いていた。

「あと少しだから、それまで辛抱だよ、ルイ」

なだめるように、アルタが言った。

「だってさ~、装備とか重いじゃん」

言ってルイは全身に仕込んでいる投具を見回す。

太ももの短剣、脇の下には小さなナイフらしき投具も見受けられる。

目で見てすぐわかる位置と、服の下に隠しているであろう投具も確認する。

「第一、なんでルティは武器すら持ってないんだよ。」

忌々しげに、空の両手のままのルティに、視線を投げる。

「失礼ね、持ってるわよ、武器くらい」

言って空の右手を空中にかざし、ひゅん、と拳を握りながら、払う。

払われた彼女の右手には、既に彼女の身長を優に越す長いランスが握られていた。


冒険者たちは、皆多かれ少なかれ、魔力を有している。

その魔力を用いて、彼等は自身の周囲の次元をずらし

そこに自分の持ち物を入れておき、必要な時に引き出すことが出来るのである。

物質の存在次元をずらすことによる収納。

彼等はこの空間を「カバン」、あるいは「インベントリ」と言い、様々な用途で使用する。



「これ持ちながら移動するの、大変じゃない」

ランスを片手に持ちながら、彼女は言った。

「け、どうせ槍の修行で筋肉つきまくってるだろうよ・・・」

小さく呟いたはずのルイだったが

「次言ったらこれ投げるわ」

笑顔で、しかしこめかみに青筋を浮かべて

ルティはしっかりと聞いているのであった。



やがて、目的の樹の下までやってくる。

陽の光を浴びて立つその木は、他の木に比べてやや高い。

葉と葉の間から地上へと描かれる陽の光は、涼しさをかもし出す。

その光を浴びて、木の根元部分にある石に、腰掛けている妙齢の女性がいた。

炎を思わせる、それでいて鮮やかな、腰まで届きそうな長く赤い髪。

つばの無い丸い帽子を被り、瞳をちょうど覆うような眼鏡をかけている。

その眼はつり上がり気味で、瞳はまとめられた書類に向けられているようだ。

口の端に加えられたタバコからは、煙が出ている。

服装は、冒険者たちのそれと、かなりかけ離れていた。

上着は白い長袖のYシャツのみで、近くの木の枝には、カーキ色の上着がかけられていた。

ズボンも上着にあわせたものだろう。

カーキ色を思わせるタイトな長ズボンは、女性の長い脚のラインをなお際立たせていた。

アルタ達が近づいたのに気づいたのか、女性は視線を彼らに向ける。

「こんにちは、ローザさん」

アルタが声をかける。

「ぉ、アルタ達じゃないか。仕事の報告か?」

別段表情を変えるでもなく、ローザと呼ばれた女性は返事をした。

ローザと呼ばれたこの女性は、地下界からやって来た悪魔である。

と言っても、彼女の目的は地上界の征服でも、RED STONE の探索などでもない。

彼女は地下界の暮らしを捨て地上にやって来た、いわゆる世捨て人である。

「こっちのほうが色々面白そうだから」

アルタと初めて出会い、身の上話をしたときの、彼女の弁である。

以来、彼女はクエストの仲介者という仕事で生計を立てている。

主に、一般の人間には手に負えない魔物退治の仕事などを

冒険者達に紹介する役割を、彼女はこなしているのであった。

ローザは、吊り上った瞳でアルタ達をしげしげと観察した後

「ふむ、どうやら報告と・・・あと何か聞きたいことがあるときたか」

と、アルタ達の思惑を見て取った。

「いいだろう、書類もちょうど区切りのいいところだ。話を聞こう」

まとめていた書類を傍らに置き、改めて視線を3人に送る。

「と、話しをする前に、ルティ、復讐はどうだった?」

一般人ならば聞かないであろう質問を、彼女はルティにした。

質問をされたルティは

「そうね。意外とあっけなかったわ」

驚く様子も見せず、あっさりと答えた。

「ふふ、そうか」

ルティの答えに満足したのか、ローザは初めてアルタ達の前で、少し笑った。

「では、話しをしよう。聞きたいこととは何だ?」

3人を代表して、ルティが前に出る。

「先ほどの質問の件と少々重なりますが」

と、ルティは悪魔との一部始終をローザに話した。

それを聞いたローザは一瞬怪訝な表情をした後

「本当にそいつの口から’自分に指示を出したのは人間だ’と?」

という問いかけをルティにした。

「はい」

即座に答えるルティ。

しばしローザは思案し

「本来なら、悪魔は人間とは相容れない存在なんだけどねぇ・・・」

と、Yシャツの胸ポケットから新しいタバコを取り出し、火をつけた。

煙が空に伸びる。

「地下界が地上界を狙う以上、悪魔と人間は敵対関係にあることに変わりは無い」

「たとえ一時の協力関係とはいえ、気を許せば裏切られ、すぐ殺されてしまうだろうな」

「だとしたら、今回の場合はむしろ協力というよりは使役と言うほうが近い」

そこまで言って、ローザはタバコの煙を空に吐いた。

左手で右肘を持ち、立てられた右腕の手の指の間に、タバコが挟まれる。

「ルティ、もしかしたらお前の村は、偶然悪魔に襲われたのではなく、狙われていたんじゃな

いか?」

レンズ越しに、ルティを見る。

「その理由は?」

真っ直ぐにローザを見つめ返す。

「その悪魔は、ご丁寧にもお前さんの村名を挙げたのだろう?なら話しは簡単だ」

「その悪魔と人間は、お前の村に何かを探しに来た。けれど見つからなかった」

「だから自分達が来た痕跡を、まぁ、いずれにしてもだろうが、焼き払った。」

「な、たかが探し物が見つからなかった程度で!?」

さすがにルティは驚きが隠せなかった。

あのような惨劇の原因が、探し物が見つからなかったから、という

そんなふざけた理由で、自分は全てを失ったのか、と。

ルティの狼狽など意に介さず、ローザは続けた。

「そう、まさに重要なのは”そこ”なのさ」

「探し物が見つからなかったからと言って、村全体を焼き払う」

「そこまでして、奴らは自分達の存在を隠したかったのさ」

「まぁ、悪魔が絡んでくる以上、アウグスタの聖職者どもではあるまい」

「だとしたら、残るはスマグの魔術協会あたりが疑わしいな」

ちょうどいい、とローザは一枚の紙に何やら文章を綴り始めた。

ややあって、その紙を封筒に入れて封をし、ルティに手渡す。

「これは?」

「魔術協会を調べたければ、まず、スマグの長にこの手紙を渡すといい」

「仕事柄、貸し借りのやりとりが多くてね」

「それに、少々興味が湧いた。私は私なりに調べてみるとしよう」

話しはそれだけだ、とローザは話すのを止めた。

「ローザ、あなたって意外と良い人なのね」

ポカンとしながら、ルティは言った。

「意外と、は余計だよ。さぁ、早く行きな、私は忙しいんだ」

アルタ達はローザに礼を言ってその場から立ち去った。

見送る視線の彼方で彼らが見えなくなった。

温かい、木からの木漏れ日を、彼女は全身に浴びる。

「さて、あいつは自身の運命に抗えるのかね」

ふー、と

白い煙が天に上った。
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